ナノ加工 技術コラム

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2026.07.16

超精密加工において、切削時に熱膨張の影響がない理由とは?

超精密加工の精度を語るうえで、「熱」は避けて通れないテーマです。特に気になるのが、切削によって発生する熱が、寸法精度にどれほど影響するのかという点ではないでしょうか。

実は、超精密加工では、切削時に発生する熱そのものは意外と小さく、熱膨張が寸法精度に与える影響はほとんど無視できるレベルにとどまります。今回は、その理由について詳しく解説します。

一般的な切削加工では「せん断熱」が発生する

金属やプラスチックなどのワークを工具で削る際、刃先がワーク表面に食い込み、材料をせん断(変形・分離)させることで切りくずが生まれます。この「せん断」という現象は、材料内部の分子・原子レベルでの摩擦や塑性変形を伴うため、必ず熱、いわゆる「せん断熱」を発生させます。

一般的な機械加工やマシニング加工では、この熱の発生量が比較的大きく、切削条件によっては工具やワークが局部的に数10〜数100℃単位で温度上昇することも珍しくありません。そのため、一般加工の現場では、切削油を使って熱を逃がしたり、加工後にワークが冷えるのを待ってから測定を行ったりするなど、熱を前提とした対策が広く行われています。

超精密加工では、せん断熱が「無視できる」レベルまで小さい

では、超精密加工ではどうでしょうか。結論から言うと、超精密加工におけるせん断熱は、一般加工と比較して桁違いに小さく、熱膨張が加工精度に与える影響はほとんど問題にならないレベルです。

その理由は、超精密加工特有の加工条件にあります。

  • 切込み量が極めて小さい:超精密加工では、1回の切込み量が数ミクロン単位と非常に微小です。削り取る材料の体積自体が少ないため、発生するせん断熱の絶対量も小さくなります。
  • 鋭利なダイヤモンドバイトを使用する:超精密加工では、鋭利に仕上げられたダイヤモンドバイトを使用します。刃先が鋭いほど、材料をスムーズに切断でき、余分な塑性変形や摩擦が抑えられるため、発生する熱も少なくなります。
  • 切削抵抗(切削力)が小さい:切込み量が小さく、刃先が鋭利であることから、加工にかかる力そのものが小さくなります。切削力が小さければ、それだけ熱への変換量も小さくなります。

このように、超精密加工は「そもそも大きな熱を発生させない加工方法」であると言い換えることができます。

熱膨張が精度に与える影響が少ない理由

物体は温度が変化すると、材質固有の熱膨張係数に応じてわずかに膨張・収縮します。仮に切削時のせん断熱によってワークや工具の温度が大きく変化すれば、加工中と測定時とで寸法が変わってしまい、ナノレベルの精度を求められる超精密加工では致命的な誤差につながりかねません。

しかし、前述の通り、超精密加工ではせん断熱そのものの発生量が非常に小さいため、ワークや工具の温度上昇もごくわずかにとどまります。温度変化が小さければ、熱膨張による寸法変化も当然小さくなり、結果として熱膨張が加工精度に与える影響はほぼ無視できるレベルとなるのです。

まとめ

超精密加工では、切込み量の小ささ、鋭利なダイヤモンドバイトの使用、切削抵抗の小ささにより、そもそも発生するせん断熱が非常に小さく、熱膨張が加工精度に与える影響はほとんど無視できるレベルにとどまります。

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