ナノ加工技術コラム

2023.08.14

超精密加工における、切削とエッチングの使い分け

１．超精密加工領域では、どんな加工方法が最適なのか？

超精密加工とは、形状精度が1μm以下、寸法精度が±2μm程度の加工を指し、半導体・光学・通信などの先端技術が必要とされる機器を製作する際に採用されます。

このような超精密な加工を施すためには様々な方法がありますが、超精密切削加工が得意な当社では、「切削かエッチングか、どちらかで進めたいと思っているが、一体、超精密加工に適しているのか分からず、迷っている」というご質問を多く頂きます。そこで今回は、【超精密切削加工】と【超精密エッチング加工】の特徴と違いをご説明し、最適な加工方法を選択して頂けるよう、コラムとして情報をお届けしたいと思います。

２．超精密切削加工とは？

超精密切削加工とは、ダイヤモンドバイトやエンドミルなどの工具を用いて、寸法精度±2μmといったレベルでワークを削ることを指します。超精密加工を実現するためには適した材質が存在し、必要に応じて表面処理を施したりする場合があります。

【特徴】

切削加工という加工方法の特性上、レンズのような曲面やシャープエッジの加工を行うことが可能です。その一方で、工具を用いた加工方法であるため、溝・穴のコーナーRには限界があります。

【コスト】

超精密切削加工では、イニシャルコストを抑えることができます。一方、数が多くなると、コストは高価になる傾向があります。

【納期】

試作加工や小ロットの場合は比較的、短納期で製作することが可能といえますが、複雑形状や加工面積が広い場合は、プログラム・加工に時間を要する場合もあります。

３．超精密エッチング加工とは？

超精密エッチング加工とは、化学薬品を使ってワークの一部を溶かすことで、任意の形状を得る加工方法のことです。
電子・半導体の世界でよく採用されている加工方法であり、精密かつ微細なパターンを形成するために使用されます。

【特徴】

上述の通り、エッチング加工では半導体ウェハ―等へ微細なパターンを成形することが可能であり、
切削加工では実現できないナノオーダーの加工を行うことができます。
一方で、デメリットとしては、溶かす加工方法であるため、シャープエッジを実現することは難しいといえます。

【コスト】

超精密エッチング加工では、フォトマスクを製作する必要があります。
そのため、フォトマスクの製作費用がかかるので、小ロットの場合は加工コストが高くなる傾向にあります。
しかしながら、フォトマスクさえできれば、加工コストはそれほど掛からないため、量産に適した加工方法です。

【納期】

フォトマスク製作に加えて、工程が多岐にわたるので、一定期間が必要となり、試作・小ロットの場合、製作に時間を要します。
一方で、一括で数多くの加工を行うことが可能であるため、量産に適した加工方法といえます。

４．超精密切削加工と超精密エッチング加工の比較

ここまで簡単に超精密切削加工と超精密エッチング加工の特徴についてご紹介しました。
次に、超精密加工領域における、切削とエッチングの違いを比較表にして簡単に表します。是非、ご参考下さい。

	超精密切削加工	超精密エッチング加工
レンズのような曲面	・連続した曲面や斜面の加工が得意	・グレースケールマスク等が必要となり、加工が難しい
得意領域	・曲面や斜面の加工	・極薄な金属板の表面など、平面における複雑なパターン加工
溝	・V溝は、サブミクロンレベルまで対応可能・矩形溝は、最小幅5µmまで対応可能・溝のコーナーは、エッジが可能	・ナノレベルの複雑な回路や、矩形溝に対応可能・溝底部のシャープエッジを実現することは難しい
穴	・最小穴径φ0.02程度まで対応可能（工具の製作限界による制限あり）・角穴は、コーナーRが0.02まで対応可能・深い穴加工が可能（最大穴深さ：穴径の約10倍）	・ナノレベルで自由な設計・加工が可能（穴深さは制約あり）
角穴	コーナーR0.01以上を前提とした場合、φ0.1程度が最小となる。深い穴加工が可能。（最大穴深さ：穴径の約10倍）	ナノレベルで自由な設計が可能。ただし、穴深さに制約がある（穴径：1 対穴深さ：1）
コスト	・イニシャルコスト：低い（大量生産になると高価になる可能性あり）	・フォトマスクの製作費用が別途で必要・小ロット加工コスト：高い・量産コスト：低い

5．超精密加工のご相談は、超精密・微細加工.comまで！

いかがでしょうか。今回は、超精密切削加工、超精密エッチング加工の違いについて詳しくご紹介しました。超精密・微細加工.comを運営するジュラロン工業では、お客様のご要望をお伺いした上で、切削加工・エッチング加工やその他の方法も含め、最適な加工方法をご提案することが可能です。超精密加工の加工方法でお悩みの方は、是非当社にご相談ください。

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