ナノ加工 技術コラム
ナノ加工 技術コラム
2021.08.20
超精密加工 と 超微細加工 の違いとは?
1.はじめに
一般的にナノ加工と言われる言葉は、1ミクロン以下の、ナノオーダーの精度・公差、あるいは大きさで加工を行うことと定義づけられますが、これとよく似た言葉で「超精密加工」「超微細加工」という言葉も存在します。一見するとこれらは非常によく似た概念・言葉であり、書籍やインターネット上でもこれらの概念を混同しているように見受けられるものもあります。しかし実際、我々のようなナノ加工を行った製品や技術を提供する会社では、これらを明確に使い分けています。
従って、ここでは「超精密加工」と「超微細加工」が表すものは何なのか?についてお伝えしていきたいと思います。
2.「精密」と「微細」のちがい
それでは、話を分かりやすくするために「精密」と「微細」という言葉の定義について解説します。
まず「精密」という言葉の定義について、デジタル大辞泉から引用させて頂くと、次のように記載されています。
【精密】
1. 極めて細かい点にまで注意が行き届いていること。また、そのさま。
2.細部にいたるまで正確な寸法で作られていること。また、そのさま。
出典:デジタル大辞泉
実際のモノを扱う我々の場合は 2. が該当すると思いますが、精密加工とは「正確な寸法でつくられている」ものということになります。
次に「微細」の定義についてもデジタル大辞泉から引用させて頂くと、
【微細】
1.きわめて細かく小さいこと。転じて、些細 (ささい) なこと。また、そのさま。
出典:デジタル大辞泉
こちらもとても分かりやすく、微細加工というと、非常に細かい・小さな加工を行ったもの、あるいは、加工したもの自体がとても細かい・小さいもの、という事が言えると思います。
従って、超精密や超微細という言葉の意味は、
超精密加工:超がつくほど、厳しい精度・公差で製作すること
超微細加工:超がつくほど、細かく・小さく製作すること
と言い換えることができます。
このように見ていくと精密と微細には明確な違いがありますが、それでも混同してしまいやすいのには理由があります。それは、精密加工を行ったものには、微細な加工も行われているというケースがかなりあるということです。
例えば下記は当社が手掛けた加工品になりますが、表面粗さ:Ra2nmであり(超精密)、かつ、V溝形状は深さ250μm、コーナーR2μm以下(超微細)となっています。
小さく細かいものは精度や公差も同時に求められることが多いので、ここは注意すべき点でもあります。
3.数値による分類
これまでの解説で、精密あるいは微細という言葉の定義・意味についてはお分かり頂けたかと思います。それでは、これを数値・単位で表現するとどうなるのでしょうか?
一般社団法人 微細加工工業会では、【微細加工領域は、まさにこの通常の「(肉眼で)見て」「自由に動かせる」境界領域に位置する。】とし、領域を0.001mm~1mmと定義しています(出典:微細加工工業会)。しかしこれが大きさや細かさのこと(微細)なのか、はたまた精度(精密)のことなのか、明確な言及はありません。
そこで、超精密 微細加工.comを運営する㈱ジュラロン工業では、ナノ加工技術をひろく提供するという立場から、世の中に存在する加工技術を俯瞰した上でこれらの定義づけを行いました。下記を参照ください。
精密加工 と 超精密加工 の境界線 | 微細加工 と 超微細加工 の境界線 | |||
代表的な指標 | 数値 | 代表的な指標 | 数値 | |
形状精度 | 1μm以下 | V溝 | 幅・深さともに0.2mm以下 | |
寸法精度 | ±2μm | 矩形溝 | 幅・深さともに0.2mm以下 | |
面粗度 | Ra10nm | 錐体 | 円錐 直径:0.1mm以下 | |
真円度 | 1μm以下 | 錐体 | 三角錐 一辺:0.1mm以下 | |
同芯度 | 1μm以下 | 錐体 | 四角錐 一辺:0.1mm以下 |
※ニッケル-りんめっきの場合
4.さいごに
ここまで「超精密」「超微細」という言葉の定義について説明して参りましたが、超精密 微細加工.comを運営するジュラロン工業では、最新の各種ナノ加工機に加えて、高度なナノ加工技術と加工プログラム技術で、ナノオーダーの超精密加工のご要望にお応えすることが可能です。ぜひお気軽にお気軽にご相談ください。
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