ナノ加工 技術コラム

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2021.06.07

なぜダイヤモンドでは 鉄 が削れないのか?

ナノオーダーの加工にはシャープエッジのダイヤモンド製の刃物を使用

超精密 微細加工.comで行うようなナノオーダーの加工を行うためには、一般的な刃物は使用できず、特別なものが必要とされます。なぜなら一般的な刃物の場合は、刃先を顕微鏡などで確認すると刃先がガタガタになっており、このような刃先では当然ながらナノオーダーの加工は実現できません。そこでナノオーダーの加工においては、刃先を鋭利に仕上げることができる材質、すなわちダイヤモンドバイトが使用されており、ナノ領域における加工では広く採用されています!

 

硬いダイヤモンドでも、鉄には負けてしまう

ではダイヤモンドの刃物を使えば、何でも削ることができるか?といえば、そうではありません。

ダイヤモンドは非常に硬い素材として知られており、多くの方は、ダイヤモンドだったら何でも削れるんじゃないか?とお考えになるかも知れません。しかし実は、硬度を表す単位「モース硬度」で表現した場合、ダイヤモンドはそのモース硬度の中でも最も硬い10なのですが、硬度4~6.5程度とそれより遙かに柔らかい鉄が、削れないのです。

 

硬度が高いのに、硬度の低いものが削れない。これは一体なぜなのでしょうか?

実はモース硬度とは、「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」という意味であり、値の大きなもので値が小さいものが削れるかどうか?ということとは、全く別ものなのです。ちなみに身近な例を示しますと、大理石:3~4に対して、骨:4、歯(表面のエナメル):7です。人間は意外と硬いものなんですね(笑)

 

 

それでは、実際にダイヤモンドバイトで鋼材を加工するとどうなるのか・・・結論から申しますと、バイトの刃先はボロボロになってしまいます。ダイヤモンドなのに、意外ですね。

 

硬くても柔らかい素材に負けてボロボロになってしまう・・・これには下記の2つの原因があります。

一つ目は、鉄系の材料を加工する際、材料と接しているダイヤモンドの表面が、加工の際に発する熱で酸化が進行してしまい、二酸化炭素となって摩耗していくためです。そして二つ目は、拡散摩耗と呼ばれる現象で、ダイヤモンドが鉄系金属材料と接触することにより、ダイヤモンドの表面を構成する炭素原子同士を共有結合させている電子が鉄系金属材料に奪われて拡散していくため、炭素原子が脱離し、摩耗するためです。ダイヤモンドは純粋な炭素で構成されていることはよく知られていますが、化学式もC(炭素)になりますので、ここは何となく想像して頂けるかと思います。摩耗というより、化学反応を起こして組成が壊れてしまう・・・そんなイメージになります。

 

では、どうやってナノ加工を実現するのか?

ナノオーダーの加工にはシャープなダイヤモンドバイトの刃先が必要、しかしダイヤモンドでは鉄は削れないというと、一体どうやってナノ加工を行っているのでしょうか?

実は、ナノ加工を行う場合には、上記のようにダイヤモンドバイトでは鋼材を直接加工することができないため、鋼材に「無電解ニッケル-りんめっき加工」を施したのちにダイヤモンドバイトで切削する方法が採用されています。この方法はごく一般的であり、広く知られているものです。

 

ですが、すべての鋼材に無電解ニッケル-りんめっき加工を施さないと絶対にナノ加工ができないのか?というと、そうではありません。

実は最近、「振動切削」という方法が考案され、ダイヤモンドバイトでも鋼材を切削する方法が実用化されているのです。この振動切削は、ダイヤモンドバイトを振動(楕円振動、直線振動の方式がある)させることより、連続ではなく断続的に切削を行うことで、上記の2つの摩耗の減少を回避し、切削を行おうというものです。

イメージとしては、ダイヤモンドバイトを鋼材に当てて通常の切削を行う場合を100%とした場合、例えば30%切削し、残り70%をエアーカット(切削しない状態)します。こうすれば、発熱も抑えられ、2つの原因も抑えられ、その結果切削が可能ということになります。

 

ただしこの振動切削方式ですべての鋼材が削れるということではなく、鋼材の炭素含有量に制約がある上、切削条件にもかなり制約があることは事実です。

 

超精密 微細加工.comを運営するジュラロン工業では、ナノ加工機や工具などを活用することに加え、被削材の物性や特性も考慮した上で加工条件・プログラムを最適化することで、他社では真似できない超精密加工や微細加工を実現しています。ナノオーダーの超精密加工はお任せください!

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